アーセリクスがなぜ注目されているか?
IPOは2022年2月。Instagramでじっちゃま(広瀬隆雄さん)が「ACLX」と一言つぶやいた注目のバイオ銘柄。その理由は、2022年6月に行われたASCO(米国臨床腫瘍学会)の年次総会にて発表された臨床試験のデータにあります。
再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象とした臨床試験で、アーセリクスの抗BCMA Car-T療法が24人の多発性骨髄腫被験者で100%の寛解率を達成し、話題に。
元FDA長官のスコットゴッドリーブ氏がベンチャーキャピタルのNEAを通じて関与しているのではないかと囁かれ注目度アップ。アーセルクス薬が承認されればテンバガーが狙えると期待が高まっています。
実際、NEAの公式サイトには、ヘルスケア分析チームのスタッフとしてスコット・ゴッドリーブ氏が紹介されています。
NEAによると、スコット・ゴッドリーブ氏は「2018 年と 2019 年にフォーチュン誌の世界の偉大なリーダー 50 人の 1 人」として、また、タイム誌では「ヘルスケアを変革する 50 人の 1 人として認められた」ようです。
ゴッドリーブ氏については、2020年5月21日のyoutubeライブで、コロナワクチンの開発に関する話をした際、じっちゃまも取り上げています。
スコットゴドリーという取締役が、ファイザーにいるが、彼は元FDA長官。大統領に対しても意見を言う、ワクチン計画の影の帝王。
ファイザーのワクチンは、スコット・ゴドリーブ氏がバックにいるから、ワクチンが承認される確率が非常に高い…という文脈で話されていましたから、ゴッドリーブ氏がバックについているなら、このアーセリクスも有望である期待が持てるというわけです。
Yahoo!financeよりDeepLにて翻訳抜粋
2022年12月時点で売り上げはゼロ。私は、連れ安で下がったところで、ちょっとずつ拾っていこうと思います。
アーセリクス(ACLX)に関するまとめ
キメラ抗原受容体(CAR) T細胞療法とは
アーセリクスが開発するのは、再発・難治性の多発性骨髄腫を対象とした新薬。キメラ抗原受容体(CAR) T細胞療法(以降、CAR-T療法とします)という治療方法を用いたものになります。
そのそも多発性骨髄腫とはどんな病気なのか、CAR-T療法とはどんな治療方法なのかを理解しておく必要があります。
CAR-T療法は、(基本的に)患者さんのT細胞を取り出して、そこに遺伝子改変を行ってから体内に投与することでがん細胞を攻撃させて治療するというもの。ただし、これだけでは説明になっていないので、専門家の説明を聞いたほうがよいです。
ブリストルマイヤーズのこちらのサイトに説明があります。
また、北海道大学の先生が多発性骨髄腫の歴史と治療方法について解説しています。こちらの動画が一番わかりやすいので、視聴をおすすめします。
多発性骨髄腫薬の立ち位置
上図は多発性骨髄腫薬の変貌を年代順に表したもの(図1)。一番右側に示されている「BCMA-CART」とあるのが、アーセリクスが開発する新薬の立ち位置といえると思います。多発性骨髄腫薬として最先端技術を用いたお薬であることは言うまでもありません。
抗CD38抗体「イサツキシマブ」は、仏サノフィ社のお薬で2020年に承認された。再発難治性多発性骨髄腫の適応。上図のうちポマリドミドと、デキサメタゾンの併用が承認されています。抗CD38抗体としては、2015年に米国で承認された「Darzalex」(ダラツズマブ)に続く2剤目。ダラツズマブは、日本では17年に承認されています。
アーセリクス(ACLX)のお薬が承認されたらどれぐらい儲かるのか?
では、アーセリクスのお薬が仮に承認されたとして、将来的にどのぐらい儲かるのかを想像してみたいと思います。
上市されているお薬
まず、現行のお薬がどのぐらいの売上高があるかを調査しました。
多発性骨髄腫は、患者さんの状態によって細かく治療法が分かれており、新しい骨髄腫の治療薬は以下のとおりに分類されます。
- プロテアソーム阻害薬
総称名:ベルケイド<一般名:ボルテゾミブ(製薬会社:ヤンセンファーマ)>
総称名:カイプロリス<一般名:カルフィルゾミブ(製薬会社:小野薬品工業)>
総称名:ニンラーロ<一般名:イキサゾミブクエン酸エステル(製薬会社:武田薬品工業)> - 免疫調整薬
総称名:サレド<一般名:サリドマイド(製薬会社:藤本製薬)>
総称名:レブラミド<一般名:レナリドミド水和物(製薬会社:ブリストルマイヤーズ)>
総称名:ポマリスト<一般名:ポマリドミド(製薬会社:ブリストルマイヤーズ)> - モノクローナル抗体薬
総称名:ダラザレックス<一般名:ダラツムマブ(製薬会社:ヤンセンファーマ)>
総称名:ダラキューロ<一般名:ダラツムマブ(製薬会社:ヤンセンファーマ)>
総称名:サークリサ<一般名:イサツキシマブ(製薬会社:サノフィ)>
総称名:エムプリシティ<一般名:エロツズマブ(製薬会社:ブリストルマイヤーズ)>
血液がんフォーラム2022(Cancer Channel)から引用
上記3剤とステロイド剤を組み合わせた治療が、多発性骨髄腫の標準治療です。
併用治療が行われているということは、新薬が承認されれば患者さんの選択肢が増え、既存薬の存在が新薬の商業化を阻むとは考えにくいでしょう。
既存薬で効果が得られなかった場合は、承認された新薬を使って治療する道が開けるのではないかと想像します。
また、アーセリクスのお薬より一足先に上市されているBCMA-CART薬は以下のとおり。
- 抗BCMA抗体薬
総称名:アベクマ<一般名:イデカブタゲンビクルユーセル(製薬会社:ブリストルマイヤーズ)>
総称名:Carvykti<一般名:シルタカブタジーンオートルーセル(製薬会社:レジェンドバイオテック/ヤンセンファーマ)>
血液がんフォーラム2022(Cancer Channel)から引用
アベクマは日本でも2020年に承認されています。Carvykitiは2022年に米国FDAに承認されました。
お薬の売上高
多発性骨髄腫薬の売上高を調べてみました。標準治療薬として採用されている主要薬からピックアップすると以下のとおり(EDGERおよび有価証券報告書調べ)。
カイプロリス(小野薬品工業)は2022年売上高84億円(前年同期比+17.5%)。ニンラーロ(武田薬品工業)は、2021年売上高912億円(前年同期比+4.4%)。レブラミド(ブリストルマイヤーズ)は、2021年売上高$12,821M(前年同期比+6.0%)。ポマリスト(ブリストルマイヤーズ)2021年売上高$3,332M(前年同期比+9.0%)。
1ドル130円換算だと、レブラミドは約1.6兆円もの売上高!ものすごい金額…。
ダラツズマブの売上高は好調で、2021年の世界売上高は60億2300万ドルを記録。このお薬を開発をしたジェンマブ(販売提携はヤンセン社)の株価は成長株としてIBDからも注目されています。
では、新薬である抗BCMA抗体薬の売上高はどうか。
アベクマ(ブリストルマイヤーズ)の2021年売上高は$164M。2021年承認のお薬であるため、前年同期比成長率は算出できませんので、2022年第3四半期の数字も見ておきますと、その売上高は$107Mで前年同期比50.7%も成長していました。第3四半期だけで141億円も稼いでいます。
仮に、四半期で$100M稼げるとしたら、年間売上高は$400M規模ということになります。ちなみに、Caryvktiは2022年に承認されたばかりで売上高は不明です。
ブリストルマイヤーズ規模で年間売上が$400M。もしもアーセリクスのお薬が承認された場合、2022年12月22日時点の株価$31.07で、PSRはたったの3.41倍。仮にアベクマの半分の売上$200MだとしてもPSRは6.81倍です。同時期のブリストルマイヤーズのPSRは3.65(TTM)となります。
計算違いしていそうで自信はありませんが、ざっと皮算用してみるとこんな感じです。
多発性骨髄腫の治療薬の解説は、「血液がんフォーラム2022」のyoutube動画で視聴できます。
多発性骨髄腫においてBCMAを治療ターゲットとする有用性
多発性骨髄腫薬まとめ
2022/06/25:良いと思うけど…
良いと思うけど、株価が3、4日で40%上がったからスピード違反。調整するのは当たり前。まだ、Phase1なんだから、お薬できるまで時間がかかる。買った先から儲かるなんて、今の相場環境からすれば時代遅れの考え方。ぐいぐい金利が上がっているわけだから、甘い相場じゃない。
詳細はch-omusubiにて!
2022/06/09:(承認されれば)3年後に株価は…
今年のASCOで一番面白いと思った銘柄。多発性骨髄腫の治療方法CART-ddBCMA を開発している。まだ第一相臨床試験なので承認まで長い道のりだが、今の時点で100%の寛解率。
承認前なので売上高はない。承認されない可能性もある。しかし、多発性骨髄腫はガンの中でも重篤なケース。こういう場合は、FDAは割とサクサク承認しやすい傾向がある。
(承認されれば)3年後に株価は…
この続きはch-omusubiにて!
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